ユリアンナねえさん
土曜の夜は、ロシアのピアニスト ユリアンナ・アヴデーエワのリサイタル
@高岡文化ホールへ。
2010年ショパンコンクールで、アルゲリッチ以来45年ぶりの女性優勝者
となり、大きな話題になりました。
我らがホームタウンの高岡文化ホールは、去年はダニール・トリフォノフ
(2011年チャイコフスキーコンクール優勝)が聴けましたし、毎年こうして
一流のクラシックピアニストをよくぞ呼んでくださる、と感心しきりです。
関係者の方々、ほんとにありがとうございます。
以下、リサイタルの私的感想です。
日本のクラシックファンから ”ユリアンナ姐さん” と呼ばれることもある
彼女は、ステージではいつも黒のパンツスーツで髪をタイトにまとめた
クールな出で立ち、男前な立ち居振る舞いで、たいへん貫禄があります。
演奏はテレビ放送や動画で何度か観ていましたが、頭脳的で正統派ながら
引きずるような独特の歌い回し。自分の好みかというと、少し違うかな…
なんでだろう…という感覚もあり、直接リサイタルを聴くのは謎解きの
ような楽しみがありました。
今回のプログラムは、、
前半にはハイドンの変奏曲とソナタ、ラヴェルの夜のガスパール。
後半はオールショパンで、2つのノクターン、バラード1番、3つのマズルカ、
締めはスケルツォ2番でした。
アンコールはワルツ、マズルカ、バッハのパルティータからジーグ。
すべてが研究し尽くされ、コントロールされ尽くされたリサイタルでした。
映像を通しては分からないことってほんとにたくさんありますね。
本当にストイックで、頭が疲れるというか、正直へとへとになりました。
彼女の精神には、もう一人のすごく厳しい彼女が鞭をもって立っていて、
私も睨みをきかせられている心持ちになるくらいです。
特にラヴェルの夜のガスパール2曲め「絞首台」…、サディスティックに
冷たく恐ろしい迫力で、背筋こおります。
ショパンのバラード1番は、fもすごく控えめなのに、悲劇的な厳しさで足が
痺れそうでした。正座している気分ということで。
マズルカはすごい。絶妙にリズムがコントロールされて、ルバートと引き算
の感覚は溜め息ものでした。異国に連れて行かれました。
ここ最近、よく聴いているお気に入りピアニストが、
情熱テクニシャンのユジャ・ワン
脱力系アスリートのソン・ヨルム
宇宙交信系、ザ・自由なトリフォノフ
という感じで、緊張と弛緩の割合でいうと5対5から4対6くらいの方達
だったので、ユリアンナ先生は9対1くらいだったでしょうか…
はじめてテレビで演奏を聴いて、好みじゃない気がしたのは、この辺りの
自分の波だったのかもしれません。あくまで、個人的分類と感想です。
リサイタルが終わってから、ゆるすぎる自分に軽く落ち込むくらいになって
帰ってきました。
姐さん、もっともっと勉強します。そしたら、姐さんの演奏がもっと楽しく
聴けるようになるでしょうか。私のほうが年上ですみません。
そういえば、ときどき目を閉じて聴くと嘘のように楽に音を楽しめました。
もったいないので、目はすぐ開けてしまいましたが。