ピアノコンクール(3)
緊張の夏、コンクールの夏。
今年のピティナコンペティション、先週は
日本各地で本選が行われていました。
私の周りでは生徒さんのお二人がデュオで
京都本選へ。我が子二人は北陸本選へ。
結果は‥悲喜こもごも。
若干、悲しいほうが多かったかもしれません。
でもそこまでの過程は、かけがえのないもの。
娘の話です。
娘は5歳で、幼く無邪気に期待していたような
結果に届くことはできませんでした。
コンクールはおろか、舞台で弾くこと自体が
初体験だった今回。
最初の結果は、信じられないほど嬉しい初体験。
次は悲しくて、悔しくて、みじめな初体験。
初めての娘の顔が、たくさん見られました。
こんな頃から競争世界においていいものかなと
思いつつ、こんな濃い経験を積むことができる
のはいいものだなと思いつつ、親としましては
本人が落ち込んでいるので、慰め励まして次に
向かわせないといけません。
慰めの言葉を尽くし、帰りの車で疲れて眠って
起きてソフトクリームを食べ、すっかり普段の
陽気な状態に戻りました。食いしん坊万歳。
雨上がりの大きな虹まで出ました。
おまけの二重でした。
車を運転して、前方の夕空を大きく横切る虹。
こんなに眩しい虹も珍しいな、いつか見たっけ
とぼんやりし、慰め疲れたので少し思考停止を
決め込んだところで、助手席の娘が言いました。
ママー、ピアノってすき?
‥‥ふーん、それを聞いてくるか、娘よ。
今。
うん。好きみたい。とゆるく答えました。
なんで?
‥‥‥私、試されているのか、と思いながら、
何かうまいことを言わなくちゃ、しかもこの
幼い彼女にわかる言葉で? と思いながら、
だめだ、もう言わなくちゃ。
咄嗟に、うーん、うめちゃんみたいだから?
と答えました。
うめちゃんは、近くの実家で飼っている犬です。
うめちゃんは、芸も何もしないし時々トイレを
失敗するし、身内以外の人や物音に過剰に吠え
ひどいときには噛み付かんばかりに飛びかかる
こともある、若干やんちゃな歳も過ぎた5歳の
女のこですが、私たち親子には大人しいのです。
じっと顔を見ては手や顔を舐め続け、気持ちを
通わせているていでの付き合いです。
動物は何も語りません。
でも、すごく通じている気がします。
一緒にいると、一人じゃない感じがします。
その体温に触れると、とても安心します。
触れた手に、向こうから何かしてくれると、
とても幸せな気持ちになります。
言葉がなくても、返事をしてくれているような
生き物としての通い合いがある気がします。
娘には、うめちゃんがおへんじしてくれる
みたいなかんじが、ピアノをひくとするから、
と答えました。
おへんじ、うふふ。ふーん。
じゃあそっちはどうなのよ、と聞いたらば、
ピアノをひいたら、なかみのほうの、
くろくてしかくいのが、ぽこんって
あがるでしょ。
それが、かっこいいから!
なかみが、いちばんすきなんだ〜
ふーん(笑)
ダンパーが上がることを言ってるのですね。
グランドピアノの譜面台のすきまから見える
ダンパー、私も大っ好きです。
ハンマーは、もっと好きですけども。
集めてます。
好きになる理由は、いろいろですね。
考えれば理由はいくつでもあるように思えます。
でも好きなことというのは、思考停止な世界で
言葉のない状態で好きなものですよね。
そう言葉にし、確認している次第であります。
ともあれ、このようにして今年のコンクールの
夏が終わりました。
終わってみれば、今年も楽しかったです。