“リアルのだめ”ルカ・デバルグへの熱狂(2)
*指揮者が2人いるモーツアルトのピアノ協奏曲24番
ルカの演奏はとにかく自由です。誰にも指示され
ない、彼だけの美学を持っています。
チャイコフスキーコンクールは、多くの偉大な
音楽家を生み出したロシアという国の誇りであり、
その厳格な思想をもって早期から高度なピアノ
教育をたたきこまれたロシア人の強さを確認する
ように、短期間で残酷なほど膨大な課題を出す
トライアスロンレースとも言われる、最難関の
国際コンクールです。そんな中であまりにも
自由な音楽世界を羽ばたかせるルカが登場し、
人々は驚きとともにすっかりハートを奪われて
しまいました。
常識的、専門的に観れば、テクニックには無駄が
多いし、もっと完璧に弾きこなす人はたくさん
いると思われる中で、ルカの魅力は別物、異次元
のものでした。
まさにたった今、ここでその曲が産み落とされた
かのように、彼の脳内で刹那的に切り取った瞬間
芸術は唯一無二の美しさで、厳格な教育も、強靭
な技術も、人間の精神世界には及ばないのだと、
ひとりの人間の力は無限なのだと、思い出させて
くれるものでした。ただただ涙腺が緩みました。
入賞者ガラコンサート1日目にはチャイコフスキー
『感傷的なワルツ』、2日目にはラヴェルの
『スカルボ』を演奏し大喝采を浴びましたが、
そのあとのインタビューでの話しぶりが、やはり
のだめ感満載の、憎めない天才ぶり。
”滞在中は(同じコンテスタントの)ウルマンや
レドキンとルームメイトで、賢く心から純粋に
音楽する彼らと過ごすのは幸せでした。パリに
いるときは寂しかった(笑)
休日は嫌いです。このコンクールのため中断
してたチェロソナタの作曲があり、最後の音を
書いてしまいたい、それが今重要なことです
(笑)”
お願いですからそのチェロソナタも持って
なんとしても日本で弾いてください。
*”チャイコン”ロスの感傷に浸るために『感傷的なワルツ』をききます