佐渡裕×ボジャノフの人間性と悪魔性④
指揮台で背を向けた佐渡さんのオーラは
全く太陽の光そのものにみえます。
自分から光を生み出す人です。
普段は程よい雲をまとっておられて、
まわりには陽だまりができるのでしょう。
警戒心をゆるやかにほぐし、正直にさせる
力があります。
そして音楽にかかるとその曇りが晴れて
全開になるのです。私たちはその強烈な
熱源を眩しく憧れてやみません。
ボジャノフがどんなにゆれても、まったく
ぶれる気配のない、ピアノの周りにぴたっと
吸い付くようなものすごい包容力。
ショパンのこの曲を何度も聴いていますが
今日初めて知った新鮮な、激しく深い感動が
からだの中に流れてしびれました。
ブラームスではずっと佐渡さんを観て聴いて
いました。背中だけでこれだけ眩しいと、
全身を正面に見た楽団の皆さんの眩しさは
いかばかりでしょうか。直射日光です。
今回のツアースケジュールの写真、素敵すぎます
佐渡さんは『指揮をするのも好き、音楽も
好きだけど、何よりも人が好きだね』と
以前おっしゃってたのですが、これだけの
熱源の人が熱を向ける方向がほかの何でも
なく人であるというこの状況は、対峙した
人の本質をどれだけさらけ出させてしまう
ことでしょう。
ボジャノフが音を読みとる天才なら、
佐渡さんがは人を読みとる天才です。
ブラームスの4楽章は、人間讃歌です。
佐渡さん曰く“雲が少しずつ形を変えて動く
ように自然に進み移り変わる”ブラームスの
音楽は、本当に音そのものに意志があると
いうことを説いているようにもきこえ、
ボジャノフの思考がここにもくっきりと
残ってみえました。
自然が形を変え移り変わること、人も、
音楽もしかり。
今日のプログラムの、究極の音の世界は、
佐渡さんが連れてきたボジャノフと、
佐渡さんが好きになったオーケストラと、
佐渡さんが好きになったブラームスによる
音と人間の力を信じる物語でした。
熱いフィナーレが終わった瞬間に、熱い
大喝采とスタンディングオベーション。
富山に来てくださって本当にありがとう。
さてアンコール!指揮台の上から振り向き
『兵庫らしい曲をえらびました。曲目は
ぼくからはいいません』といたずらっぽく
始まったのはなんと…
会場『ええ〜!(笑いと大歓声と大拍手)』
途中、まさかの(お決まりの?)佐渡さん
ピアニカ演奏もあり、会場も手拍子をして
皆の幸せは最高潮に。
最後の最後にガッツポーズをする佐渡さん。
いやいやそれはこちらの気持ちです、と
言いたかったです。
最高に幸せな気持ちで席を立ち、でももう
あまりきてくれないだろうな…、と切なく
思いながら、ボジャノフのサイン会に並ぶと
えっ!と二度見するほど朗らかなオーラの
ボジャノフがあらわれました。
意外!意外!こんなに人なつこそうな人だ
なんて!
ペンを何色にするか一瞬悩んでくださる
ほど丁寧なサイン、すすんで握手まで。
肉厚であたたかい手でした。
あの音の悪魔性は超能力だと思いました。
私は彼の人間部分も信じます。
アメージング!