和声が心をわしづかみにする
先月放送されたNHK教育『らららクラシック』
”もっと自由にピアノ”がテーマで、
録画していたのを最近観ました。
曲はショパン尽くしのラインナップ。
見どころは、いまや風格たっぷりの
キーシンによるピアノ協奏曲1番。
確信に満ちた音づくりが素晴らしいキーシンは、
昔から、円を描くように上半身を揺らす演奏が独特です。
それが、素晴らしい、音楽なのです、が……
私、規則的なその揺れを見ていると……
…
目眩がします………
くらくらと強烈な既視感に襲われたと思ったら、
数ヵ月前の再放送でした。
さて、ゲストはジャズピアニストの小曽根真さん。
”ブルース”と”ショパン”の共通点を語るにつけて、
どちらも人の心をわしづかみにしてやまない
”和声”の力を持っている点を挙げられていました。
私の心も、この言葉にぐっとわしづかみ。
7年ほど前、ショパンコンクール出場経験のある
女性ピアニストの方に演奏を聴いていただく機会があり、
”和声の変化をもっと意識して”と言っていただいてから、
ずっと和声のことを考えています。
和声、つまりハーモニーは、音楽の三要素の一つですね。
リズム・メロディー・ハーモニー。
リトミックでは、リズムは “(身体の)鼓動”、
メロディーは”個性”、ハーモニーは”調和” と捉えます。
「調和」の力……
異なる音、異なる人、異質なものごとの”重なり”が、
単独では成し得ない豊かな状態をつくる力、でしょうか。
何か、根源的な、宇宙的な力を感じます。
小曽根さんの言葉にある、ショパンの多くの作品でも、
ブルースやジャズの世界でも、どんなジャンルの音楽でも、
人が惹き付けられるあらゆる楽曲には、
宇宙のどこかに交信して拾ってきたような、
神懸かった和声の力があります。
というわけで、音楽を楽しむためには、和声の話が欠かせません。
レッスンでは導入期から、和声聴音でスタートします。
和声感や音感は、1歳から9歳頃までの音楽体験で
決まってしまうとも言われていますが、
大人の方ほど、理論的に様々な角度で考えられるので
曲の中での和声の役割をしっかり捉えることができます。
和声の意味が分かり、一つずつの音の意味が分かると、
音楽の楽しみが宇宙にまで拡がるような気がします。