ラグタイムでなければ
音楽が、想像を超える浸透力で、心身にしみ込んで
くることがあります。
人が生きている、時々の波のゆらゆらした部分に、
あまりの合致をみせる音楽の浸透力といったら。
例えば真夏の午後の清涼飲料水のように瑞々しく、
あるいは数千のパズルのピースがはまる痛快さで、
あるいは特殊な疾患の特効薬のような鮮烈な癒しを
もたらすものではないかと、、、、
例によってとりとめもなく、思います。
さて、そんな波長の合致を、この曲で感じている
今日このごろです。ラグタイムです。
Graceful Ghost Rag / William Bolcom
(優雅な幽霊のラグ / ウィリアム・ボルコム)
ご紹介に、さわりだけ弾いてみました。
まだ弾き込んでなく拙い演奏ですが、お許しいただ
ければ幸いです。
でも波長が合うときの音楽というのは、何も考えず
表面的に音をなぞるだけで、ものすごく親密な触感
があるものです。
初めて聴いたとき、ふわっと身体があたたかくなり、
脳がゆるんでいくみたいでした。
血の巡りが良くなって、肩こりがほぐれて、、
経験はないのですが「足湯」ってありますよね。
足湯に入るとこんな感じなのではないかと。
さてラグタイムは、19世紀末にアメリカで生まれた
音楽ジャンルです。黒人的なシンコペーションを
多用した独特のリズムを持ち、”ずれたリズム
(ragged-time)”が語源だとか、”ぼろ布(rag)を
着て演奏するような音楽”だとか、名前の由来は諸説
あるそうですよ。
ラグタイムの王と言われたのはスコット・ジョプリン。
“ジ・エンターテイナー”や”メイプル・リーフ・ラグ”
は今も大変有名でございます。
私、ディズニーランドとかの屋外で耳にするイメージ
です。
“優雅な幽霊のラグ”作曲者のウィリアム・ボルコムは、
現在も活躍するアメリカのピアニストで、本格的な
クラシック出身の方です。
緻密で凝った曲作りをするわりに、発想はユニークで
親しみやすく、幽霊や神話などがモチーフになって
いたりします。
おそらくシャイな方なのかなと思うのですが、ラグへ
の愛は満ち満ちており、というのも、ラグタイムは
音楽シーンから一時姿を消しており(ジャズに取って
代わられたのです)完全に廃れてしまったのですが、
その後ボルコムが中心となって復興させようとしてい
るとか。
『モダン・ラグ』とよばれる世代だそうです。
個人的に大好きなガーシュウィンが、ラグタイムの
流れかと思っていましたが、実はガーシュウィンが
書いたラグは1曲だけでした。
ラグ全盛の頃より、ちょっとガーシュウィンの時代は
後なんです。
ラグタイム、好きだ〜と思っていましたが、まだまだ
知らないことがたくさんです。
調べていたら、波長にぴったりの言葉も見つけました。
この世の中、ラグタイムでなければ表現できない
世界が、確かにある
うん、心からそう思います。