今、練習中
5月に楽器店教室の発表会があります。
生徒さんの曲は仕上げに向け、カウントダウンにさしかかる中、私も
講師演奏の仕上げにさしかかり…さしかかれるのでしょうか…
今年は新曲をさらうおうと、数ヶ月前からはじめた曲ですが、肩が凝る。
オクターブと脱力が課題です。
曲は有名なモーツァルト「トルコ行進曲」のヴォロドス編曲版です。
変奏曲で、「トルコ行進曲によるパラフレーズ」とも呼ばれています。
アンコールピースで最近取り上げられることが多いようで、私は去年
金沢で開かれたピアノリサイタルで初めて聴きました。
韓国の大好きなピアニスト ソン・ヨルムさんです。
私が観にいったときもこの衣装で、むきたて卵みたいにぴかぴかのお肌。
このヴォロドスのトルコ行進曲は、いかにもアンコール的で、音楽性より
大道芸のような技巧をばんばん盛り込んだような曲だとして、ちまたでは
賛否が分かれることもあるようなのですが、彼女が弾くとほんとに美しく
端正。
この他にも大曲が満載のプログラムでしたが、どんな複雑な曲でも、
彼女にかかるととてもシンプルに構成が浮かびあがって、ああこんな曲
だったんだ、と目から鱗と力が抜けていく説得力があります。
音と音の隙間を多めにとる感じも、ひじょうに私好み…。ぱらぱらと粒立ち
鮮やかに気持ちよく音が抜けるし、いつくしむような弱音がひきたちます。
あとはなんといっても、音楽の流れが自然で、身体の使い方もすごく自然。
まっすぐな黒髪を躍動させて弾くチャイコフスキー交響曲『悲愴』の3楽章、
しなやかなダンスを観ているようです。
アンコールで、トルコ行進曲のもう1バージョン、ファジル・サイ編曲版
を弾いてからすぐ、こっちのヴォロドス版を弾きはじめて笑いが起こるなど、
大興奮のリサイタルでした。
また、びっくりなことも。
プログラムに、チャイコフスキーコンクールでベストパフォーマンス賞を
受賞したシチェドリンの曲「チャイコフスキーエチュード」があり、
近現代の、暗譜の難しい曲なんでしょう、彼女の手にはなんとiPadが。
iPadは譜面台にガコッと置かれ、ざわめく客席をよそに演奏が始まりました。
曲がある程度進むと、どこからともなく手が伸びてきて画面をタッチ、自ら
シャッとページをめくります。おお〜〜。
驚きましたが、時代です。ときどきタッチがうまくいかなくて、シャ………
シャシャッとなることもあり、曲中ドキドキしました。
——— 長く綴ってしまいました。
トルコ行進曲を弾いていると、彼女の端正な演奏が鮮明によみがえります。
今は仕上げにさしかかる前の、ただ楽しいばかりの段階ですが、さしかかる
仕上げの時間はいつも怖いです。
家族に迷惑になるだけの音量は出ますが、子どもらはノリよく歌いながら
聴いてくれます。子ども受けはよいのかもしれません。