花は咲く
昨日は、3. 11でした。
今日は、3. 12です。
明日は、3. 13です。
それから3. 14と、3. 15。
4年前の、このいくつかの日付の数字は
いやにくっきりと記憶に残っています。
震災のときは東京に住んでいて、楽器店で
働いていました。
電車が麻痺したので会社から歩いて帰り、
保育園に子ども2人を迎えにいきました。
子どもたちは笑っていて、保育士の先生は
泣いていました。私も泣きました。
テレビをずっとみていました。
日付が更新されるたびに、死者と不明者の
数が増えていきました。
何かの冗談のように、原子力発電所が
白と灰色の煙をあげていました。
東京でも家の窓は閉め、換気扇は止める
ように指示がありました。
街中でサイレンが鳴り、水は飲まないで
くださいと警告されました。
計画停電の知らせが届き、懐中電灯の
補充ができず商店街を右往左往しました。
余震はしばらく毎日続きました。
被害という被害は、自分や家族には何も
ないといえる状況でした。
でも、たくさんの情報が入るそのたびに、
自分の価値観が瓦礫と同じく音を立てて
崩れ、流され朽ちていくのを感じました。
『花は咲く』ができたのは、3年前です。
大好きです。凄い曲だと思います。
作詞は仙台出身の映画監督、岩井俊二さん。
花は咲く いつか生まれる君に
花は咲く わたしは何を残しただろう
凄い言葉です。亡くなった人の目線で
書かれています。
作曲は仙台出身の音楽家、菅野よう子さん。
映画やアニメ界で物凄い活躍、音楽シーンの
歴史を変える程の、物凄い才能のある方です。
そんなキレキレの方が、こんなにシンプルで
こんなに美しい曲を。
日本古来の五音音階の旋律で、あたたかく
やさしく前向きな長調でありながら、どんな
レクイエムよりも悲しく、どうにも涙を誘う
和声進行。
これだけの方なので、涙を誘うハーモニーの
作り方を知り尽くしているはずで、それは
わかっていても、まんまと作戦に乗る私たち
です。多分、私たちに涙を流させるために
作られたのです。
涙は、癒しで、明日への力なのです。
一人でとつとつ弾いていて、そんなことを
思いました。
ところで、少し前から県内のレストランで
ピアノ演奏の仕事をさせていただいています。
昨日の3.11、そちらでもこの曲を弾かせて
いただいたのですが、もしかして、少しでも、
一音でも、聴いていてくださるかもしれない
方がおられる場で弾くのは、一人で弾くのと
全然違います。癒しが倍増し、力が4倍増に
なるような心持ちです。
音楽に生かされ、人に生かされていることを
確認する今年の3.11でした。