トリフォノフについて(1)
お気に入りのピアニストの一人、トリフォノフの
新譜が出ました。ばんざい!
プロフィールをご紹介しますと、
ダニール・トリフォノフ –Daniil Trifonov
1991年ロシアのニジニ・ノヴゴロド生まれ。
2010年 第16回ショパン国際ピアノコンクール第3位。
2011年 ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクール
第1位、聴衆賞等受賞。さらにその数週間後に行われた
第14回チャイコフスキー国際コンクールにて第1位、
全部門を通したグランプリ(史上2人目)を受賞。
ピアニストとして活躍するかたわら、ピアノ、室内楽、
オーケストラ曲などの作曲も行っている。
2012年2月には、音楽の殿堂、カーネギーホールでの
リサイタルデビューを果たし、大きな注目を集めた。
今回の新譜は、その大きな注目を集めたカーネギー
ホールのライブ録音で、曲目はこのように。
A.スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調《幻想ソナタ》
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
ショパン:24の前奏曲
メトネル:4つのおとぎ話 作品26から 第2曲
トリフォノフ・ワールド全開、絶好調、大成功の
リサイタルだったようで、熱気も伝わりました。
リストのソナタロ短調は、ピアノ史に燦然と輝く
傑作ですが、深遠で重厚な世界観を表現するのに
彼はまだ若すぎる、などの批評もあったようで、
実はかなり先入観を持って聴きました。
でも結果、大感動。CDで涙が出たのは久しぶり
です。若くて何が悪い!! と思いました。
きっと私もまだ若いのです。
トリフォノフの魅力は、ひとことでいいますと、
宇宙的。
曲が生み出された創造の理由を探るべく、宇宙の
どこかにあるポイントと交信して、作曲家の意志を
そのまま写し出しているような説得力。
あるいはこの世のものでない神なのか悪魔なのかに
憑依されたような集中力。
昨年は、我らがホームタウン高岡文化ホールでも、
リサイタルを聴くことができました。
演奏中の彼は、現世にいるようにはとても見えません。
曲に没頭し、音のものがたりに対応して、くるくる
変化し続ける表情は、日本のファンからは”顔芸”と
呼ばれて親しまれています。
きっと私たちには見えないものを見て、聴こえない
声を聴き、触れられない何かに触れているのです…
エキセントリックなほど鋭い感覚で、しかし決して
異端ではない正統派の解釈で評論家をうならせ、
アルゲリッチが絶賛し、名立たる指揮者からも熱い
支持をうけ、50年に一人の逸材とも言われている
トリフォノフ。
同じ時代に生き、これから聴き込める新譜がある
ことの幸せ!